内容:昨日の空は青かった。彼女はふとそう思った。そして今日の空も昨日と変わらず青い。だが彼女の目には少し違って映っていた。やけに空が低く見える。この青くて綺麗な空も所詮は脳が作り出した幻覚なんだ。そう思えてくる。そう思うことが不思議だった。くだらない。こんな思考に何の意味も無い事は言われるまでもなく、彼女が一番よく分かっている。かと言って、学校や仕事、人間関係、他の事にはどれほどの意味があるのだろうか?自分自身ではどうにも出来ないもの。自分でもどうにか出来るもの。それさえもよく分からないもの。意味があるのかどうか、結局は自分次第なんだろう。決められた囲いの中、だけど全ては自分次第。それが彼女に重くのしかかり、倦怠感ばかりが付きまとう。正解のない自己問答。そして無常観。泣きそうになる。普段は心の奥に押し込めているそんな思考。いつもは普通に友人と遊び、彼氏とデートをし映画を見て、なりたい自分を目指して嫌々ながらも勉強をする。だが、友人との会話、昔行った事のある思い出の場所、日常生活の中、ふとした切欠で彼女はそんな思考を繰り返すのだ。そして、いつも行き着く答えは一緒だった。それでも同じ思考を繰り返してしまうのは、彼女自身がその答えに納得してないからなのだろう。もしくは、その答え自体がたいした意味を持っていないからか。結局はそんなもの。その中で自分はどうするかが重要なのだろう。彼女は携帯電話を片手にとり、某大手SNSで知り合った男に連絡を入れた。彼と彼女は考え方が似ていた。だが彼は彼女と違い、そんなものなんだと割り切っているようだ。それを受け入れた上で毎日を楽しんでいるように見える。彼女はそれが羨ましかった。こんな自問自答に駆られた時は、彼に連絡を取るのが常だ。そうすると、少し気持ちが楽になる。そして今回、彼と初めて会う事になった。次の日、渋谷で待ち合わせる。待ち合わせ場所で待っていた彼は、スラッとしていて背が高く、思っていた通りの男だった。改めて軽く自己紹介をし、喫茶店へと向かう。今までのやり取りでなんとなく分ってはいたが、彼はアダルトビデオの撮影を仕事としているようだ。そして、「せっかくの人生なんだから楽しまなくちゃ」と彼に誘われ、ビデオへの出演を決めたのだった。