内容:彼女は、物心ついたときからセックス恐怖症に悩まされていた。テレビドラマや映画で、ラブ・シーンがあると吐き気を催してしまうのである。理由は分かっていたが、それを認めたくなく必死で逃げてきた。 彼女が生まれたのは北海道の、観光地としても有名な港町。そこで彼女は育った。観光地として有名な町だが、そんな華やかな場所はごく一部。あとはさびれた、何処にでもあるような哀愁というより、悲哀に近い港町である。彼女の両親はケンカが絶えなかった。父親は漁師を長年続けてきたが、業務中の事故により足を切断してしまう。以来、働けずにわずかな生活保護で暮らす生活。しかし自暴自棄になった父親は、そのお金を酒に変え朝から晩まで飲み明かす生活。一方、母親はスーパーのパートに従事していた。だがその金も全て酒に変わっていった。抵抗すると暴力をふるわれるだけ。途中からは抵抗すらしなくなってしまった。そのうちに彼女は異変に気づく。父親は働かず、母親はただのパートの家庭なのに、どんどん裕福な暮らしになっているのである。外食が増えたり、家電が変わったり、しまいには引っ越しまでしてしまった。何かおかしいと思いつつも日々を過ごしていた。その日は運動会の前日で、午前授業の日だった。家に入ろうとすると、なぜかカギがかかっている。おかしいと思いつつ、ベランダから入ろうとすると部屋にはカーテンが。嫌な予感と興味が混ざり合った感情で、その隙間から覗いてみた。「白人の人が、母に覆いかぶさって何かやってるんですよ。まぁ子供っていっても小学生ですからね、もうすぐに分かりましたよ。結局は外国人相手に娼婦やっていたんですよね」 彼女の住む町は漁で、海外(といってもほとんどロシアだが)から出稼ぎに来る外国人が多い。その外国人相手に母親は体を売り、お金をかせいでいた。おそらく父親も知っていたと、彼女は語る。彼女が目撃したその日、彼女は公園で時間を潰し、何事もなかったかのように帰宅したという。その後もそういう時が数回あった。いまでは彼女知らなかったというのが、家族の暗黙の了解である。しかし以来、彼女はセックスに対して嫌悪感を抱くことになる。どんなに好きになっても、セックスとなるとダメだという。どれだけ経験しても、克服はできなかった。そんな彼女だが、今回こそは自分の人生を変えるチャンスとばかりに応募してきた。お金はもちろん理由の一つだが、トラウマを乗り越えることこそが、今回の出演理由なのである。