内容:「弱っている人間が好き」そんなことを、虚ろな瞳で語るさとみ(22)。男優のおっさんのつまらないギャグも冷めた笑いで対応するクールガールだ。基本的に活発的な人間が嫌いなので、元気な人に対応するときはいつも一歩下がって見てしまう。「はー」とか「ふーん」とか。まぁ話している方はつまらないだろう。彼女は「弱っている人間」つまり草食系の人間が好きなのだ。自分から何も話さないような、いつもモジモジしているようなそんな人間。そうゆう人間ロと一緒にいると心が落ち着くのだそうだ。自然の中で森林浴をしているような感覚になるのだという。人間と人間の間には必要以上の言葉はいらない。そういう持論がある彼女は、人間とのコミュニケーションに対してこだわりを持っていた。そんな彼女がもっと好きなのが、「身体的にも弱っている人」なのだそうだ。怪我をした人間や、病気になった人間。そんな弱っている人を見ると、なぜか介護をしたくなってしまうのだという。そんな性格を持つようになったのは、そう。彼女がまだ小学生だった頃に遡る・・・。自分の父親は小さい頃から、いちいち口うるさい父親だった。何をするにも何かと口を出してきて、自分の思い通りにことが進むことなんてまずなかった。そんな口うるさい親が嫌いだった。そんな彼女が唯一好きだった家族が、一緒に同居していたおじいちゃんだった。そのおじいちゃんはいつも怖い顔をしている厳格な雰囲気を持ったおじいちゃんだった。しかし孫である彼女には優しく、何をしても許してくれる、仏のような人だった。そんなおじいちゃんと過ごす時間が大好きだった。何も話さなくても、一緒にいるだけで温かい気持ちになれた。彼女のことを見てニコニコしているだけのおじいちゃん。側にいれるだけでよかった。そんなおじいちゃんも歳を取るにつれ、元気もなくなり、やがて介護を必要とするほど衰えてしまった。しかし、それでも彼女のおじいちゃんに対する愛は変わらなかった。むしろもっと好きになっていた。何も語らない、何もコミュニケーションをとらない。そんな関係でも彼女はおじいちゃんの考えていることが手に取るように分かった。そうして過ごしていって、やがておじいちゃんは息を引き取った。それからというもの彼女の弱っている人間に対する執着は加速していった。おじいちゃんの代わりを探すわけではないが、弱っている人間を自ら探し、そして自分の支えにしていたのだ。ボランティアもよくしたし、困っている人を助けたりもした。周りから見れば心の優しい良い子という印象だが、それは彼女にとっては自分の欲求を満たすためにやっていたので、複雑な心境だった。初めてSEXした人も、公園のベンチでツラそうにしていた年下の男だった。彼女から声をかけ、そして、度々会うようになり、付き合い始めて、SEXをした。凄く穏やかな時間の中で付き合っていた二人だったが、彼氏は社会にあまり順応出来るタイプではなく、お金もまったくもっていなかった。そして彼女は、カレに内緒でお金を稼ぎ、そしてカレにお小遣いを渡していた。彼女はカレに弱いままでいてほしい。その一心で彼女はお金を稼ぐのだ。自分の理想である「弱い人間」をいつまでも保ってほしいが為に。そしてカレはどんどんダメ人間になっていった。それは奇しくも彼女の理想に近づいていくのであった。今日彼女が撮影に来た理由ももちろんカレのため・・・。自分の安息の地を求めて、自分を売る。このサイクルは実に不思議だが、実にエロい。私はそう感じてしまった。