内容:彼女の名はすみれ。すみれの花ことばは「小さな愛」だそうだ。この、まだあどけなさが残る少女は、まさにその「小さな愛」のために、大人と子供の混ざり合う不安定な心を揺らされ続けていた。彼女には、仲のいい幼馴染がいた。幼稚園の頃からいつも一緒に遊んだりしていた。そんな仲のよかった二人だが、中学校に上がってしばらくすると、幼馴染の態度がどことなく素っ気なくなった。徐々に顔を合わせる回数も減っていく。高校に進学する頃にはさっぱり合わなくなった。顔を合わせなくなってから1年が経とうとした頃、偶然家の近くでばったり鉢合わせた2人。すみれは思い切って聞く。「私のことを嫌いになってしまったのか」と。幼馴染はその問いには答えず、「家に来て欲しい」とだけ言った。言われるまま幼馴染の部屋まで来たすみれ。「最近どうなの?」「どうして最近合ってくれなくなったの?」いくら質問をしても、やはり答えは返ってこない。その代わりに、急に顔をすみれへ近づけ――口づけを交わした。ようやく全てを理解したすみれ。理解は出来たが心の整理が出来ない。何も言わず部屋から出ていくすみれ。悩む。大人と子供の混じりあう心が揺れる。自分は、幼馴染とこれからどう向き合ったらいいのか……。答えが出ないまま19歳の誕生日を迎えてしまったすみれ。毎日を魂が抜けてしまったようにぼーっと過ごしていた。ある日、なんとなくバイトの募集広告を眺めているとふと目に止まった「短期・高収入」のバイト。ネットなどの情報から、AV撮影かなにかだろうと適当に推測する。AV。大人への階段……あまりにも馬鹿げた考えだろうが、揺れ続ける心に疲れはて、何にでもすがりたいと思っていたすみれにとっては、その馬鹿げた考えを正当化させるのには十分だった。ただ大人になるためだけではない。彼が好きだから。彼にちゃんと向き合いたいから……すみれは、自分なりに大人の階段を登り始めた。成熟し、膨らみゆく胸に、「小さな愛」を秘めて……。