内容:彼女の名前はみなもん。もちろん本名ではない。食べることが趣味な、至って普通のOLだ。みなもんはしばらく彼氏がいないというのがちょっとした悩みだったが、それ以外に大した悩みというものがなく、平和な日々を過ごしていた。食べることが趣味なみなもんにとって、ご飯時にだけは悩むことがあった。それは「美味しい食事をいただけるかどうか」ということだ。お腹が満たせればそれでいい、なんて人もいるだろうが、味や質には毎食満足していたい。お昼休みにお財布を握りしめ、真剣に食べるものを選ぶことに頭を悩ませるのはまた、楽しいことでもあった。休日に彼女は好物のミルクレープを作った。スイーツ作りも趣味の一つである。最近ではクッ○パッ○と睨めっこすることも少なくなった。ミルクレープとは、クレープ生地とクリームが交互に重なっているスイーツである。みなもんはこの生地とクリームに改良を重ね、目標であった30枚重ねふっくらミルクレープを作ることに成功した。ミルクレープのクリームは、カスタードクリームとホイップクリームを混ぜたものであり、20枚以上も重ねると重みでふっくら感・クリーム感が損なわれてしまう。30枚重ねて満足のいくクリーム感は革命といっても過言ではない。みなもんは興奮しながらフォークを取り、完成したミルクレープの一番上の生地を丁寧にはがした。ふっくらとしたクリームが生地の裏についてくる。みなもんは感動に身体を震わせた。ぽってりとフォークに巻きついたそれをうっとりと見つめてから頬張った。天にも昇る心地だ。それからも一枚一枚、生地をはがして食べていく。先程このミルクレープを作る際に自分で重ねた生地だ。この虚しさ、この食べ方が最高に美味しいのだ。