内容:去年の春、公園のベンチで1人、桜を見ている彼女を見つけた。桜の木を見上げ、1人悲しそうな顔をし、今にも泣き出しそうな…グッとこらえているようにも見えた。思わず声をかけてしまったくらい、切ない顔をしていた。あとから聞いた話だと、その日は当時の彼氏と別れたばかりで一緒にお花見をした場所で思い出に浸っていたそう。自分と出会ってからの彼女はいつもどこか淋しげな顔をし、自分じゃ楽しませてあげれないのかな…?といつも不安に思っていた。それでもなんとか彼女を楽しませようと、普段は行かないような場所へ遠出してみたり、夜の街へ繰り出してみたり、いろいろと試しては見たが心から笑った顔の彼女を見れることはなかった。自身喪失し、彼女と連絡をとらなくなってから半年が過ぎたある日、新宿の夜の街で彼女を見つけた。出会ったころとは違う、派手めな化粧、胸のあいた服、短いスカートを穿き、すれ違う男の人達に今までに見たことはない笑顔で声をかけ、素通りされてはまた別の人へ…若者から年配のサラリーマンまで、幅広い男の人達に声をかけては笑顔を振りまいていた。彼女を笑顔にできるのは自分ではなく、自分以外の男の人であったのだと気づいた時、目の前が真っ暗になりその場で立ち竦んでしまい、その後どうやって家に帰ったのか覚えていない…。はっきりとわかるのは、今日も知らない男の人に声をかけ満面の笑みで笑いかける彼女が夜の街にいることだけだ…。