内容:彼と出会ったのはいつの頃だったか――もう覚えていない。10代前半で性に目覚め始めた頃には、彼はあきのそばにいた。すらっとした長身で、年はあきより5歳ほど上、あきが一人でいるとふらっと現れて、しばらく話し相手をしてふらっと消えていく。あきはいつも、彼とセックスする妄想をしながら自分を慰めていた。とても紳士的で、あきがいくらアプローチをしても実際に手を出すようなことはしてこなかった。あきは17歳になると、同級生の男の子から告白され、付き合うことになった。同級生の彼氏はすぐに手を出してきた。あの彼との妄想セックスが気持ちよくて、実際のセックスに期待しすぎていたので、こんなもんかと思った。初体験はそんなものだった。同級生の彼氏がいても、オナニーはあの彼との妄想でしていた。不思議と罪悪感はなかった。それからも彼氏が何度か変わっても、あきの妄想の中ではあの彼としていた。そうして長年恋い焦がれた彼と付き合うことになったのは、21歳になる前くらいだった。あきは初めて告白した。彼にはそもそも断る理由がなかったので、あきが告白してくればいつでも付き合うつもりでいた。ただ、付き合うことになっても彼はあきには手を出してこなかった。手も繋がないし、キスもしない。それもそのはず、彼はあきの脳内にしかいないのだ。誰にも奪われない、自分にしか見えない彼氏。それで満足・・・のはずだった。やはり、人肌に触れたい。そう思ったあきは、セックスのできるアルバイトに応募したのだった。