内容:モノトーンくみこ。彼女は白と黒が好きだ。服装は大抵白と黒、持ち物も白と黒が多めだ。下着はビビッドピンクなのだが――。彼女が白と黒を愛しているのには理由がある。ピアノが大好きなのだ。小さい頃からピアノを習い、実家にあるグランドピアノと成長を共にしてきた。将来はピアニストかなぁ?などと母親には言われていたが、くみこはピアニストになろうなどという気はちっともなかった。ピアノは大好きだが、ピアノを弾くことはあまり好きではなかった。あの黒くてぴかぴか光っていて大きくて硬い躰、叩けば綺麗な音を奏でる鍵盤。見た目やその性質が好きだった。上手く弾けないから弾くことは好きになれなかったが、一緒に居れるだけで幸せだった。ピアノは何も裏切らないと信じていた。しかし、ある日事件は起こった。それはくみこが小学六年生になった頃、周りの友人たちが好きな人の話で盛り上がっていた時だ。「私は○○君が好き!」「私は絶対××君と結婚するんだ!」などと友人が言い合っていた。くみこの運命の人は実家のグランドピアノであった。それ以外に好きな人はいないし、絶対にピアノと結婚するんだと信じて疑わなかった。友人が「くみこの好きな人は?」と聞いてきたので、そのことをはっきり伝えると、みんなは揃って「くみこちゃん、ヘーン!」「ピアノなんかと結婚はできないよ!」そう言ってきたのだ。くみこはピアノに恋するのが普通でないことだと知った。初めてピアノに裏切られた時であった。それ以来ピアノを習うのをやめ、ピアノの下に布団を敷いて寝るのもやめた。それからは普通の人間と恋をした。――初恋は忘れられず、未だに白と黒のものを集めてしまうのだが――普通の恋をし、普通のセックスを経て、くみこはペニスが好きになった。見た目やその性質のせいだろう。彼氏と別れたばかりのくみこは、ペニスに触り愛でたいという単純な理由でAV撮影の誘いに乗った。まだペニスには、裏切られていない。