内容:この業界が長い僕にとって、ほとんどがクソみたいな仕事の中で唯一の楽しみがある。意外と思うかもしれないが、実は面接である。元々どんな人に会っても、その人のパーソナルなことが気になるヤツだった。それもガキの頃から。しかし、たまにそれすら嫌になることがたまにある。その“たまに"が今回、面接した女。れな、25歳の面接だった。 当日、いかにも幸の薄そうな女が入ってきて、「ああ、どうせ男にダマされたり、ヒモを飼っていたりするタイプなんだろう」と思っていたが、そんな生易しいものではなかった。そして彼女が見せる、バレバレな作り笑いにも理由があった。 彼女が生まれてからの最初の記憶は、両親が言い争っている姿だったという。以来、それは彼女が家を出るまで変わることはなく、そのまま育ってきた。「お父さんが全くといっていいほど、働かない人だったんです。しかも、その上ギャンブル好きで……。毎日といっていいほど両親はケンカしてました」。 父が働かないということは、もうどんな家庭かは見えてくる。「本当に貧乏で……。今、考えてみると、後ろ指されるってああいうことなんだなって思いますよ。本当にヒドかったですから」ここで言う貧乏とは、その日の晩飯に困るほどだったという。あえて聞きもしなかったが、もちろん思春期の楽しみなんかもなかっただろう。俺とそんなに変わらない年齢だと、すくなくとも俺の周りにそこまで貧乏のヤツはいなかった。話を聞いてるうちに、もっと昔、そうそれも昭和40年代とか、俺らが生まれるもっと前の話に聞こえてきてならなかった。 そして彼女の出演理由を聞くと、その感覚はもっと深いものとなった。「私、家の都合で高校に行ってないんですよ。まぁ都合っていっても、お金しかないんですけどね。だから、就職するにも出来ないし。今はバイトやってますけど、未だに親に“金よこせ"みたいに言われるんですよ」彼女は表情を変えずに言う。おそらく当たり前のこととなっているのだろう。やっと解放されると思った貧乏の螺旋からは、どうやら逃げられないようだ。「この変でちょっと稼いで、そのお金を親に渡して、もう関わらないようにしようかなって」という答えが返ってきた。彼女なりに考えてきたのかもしれないが、お金がないからAVという、あまりに安易な考え。しかし無理もないかもしれない。彼女の生い立ちを聞いていると、それしか選択肢が思い浮かばないのも無理はないと思う。果たして、このお金で彼女は貧乏の螺旋から抜け出せるだろうか?