内容:切れ長で涼しげな目元が色っぽい和風美人のさやか(26歳)。長身の割に体の線は細く、ピンと張った背筋とちょっとした振る舞いから育ちの良さを感じさせる。実際に彼女は厳しい家庭の中で育てられたらしく、物静かな中にも一本筋の通った性格が彼女の中に時折垣間見える。彼女の父親は昔気質の亭主関白な人物で、家の中では父親の言う事が全てだった。例えそれがどんなに理不尽なことであっても父親の言うことは絶対であり、母親も黙ってそれに従うような昔ながらの良妻だった。当然父親はさやかにも厳しく、彼女が22歳の時に半ば家出の様な形で家を出るまで、彼女にとって青春と呼べるような華やかしい時代は無かったという。さやかが高校生の時、彼女に告白をしてきた一人の男子がいた。彼はさやかのクラスメイトで、さやかも密かに好意を抱いていた相手だった。二人はすぐに交際を始めたが、もちろんその事がさやかの父親にバレれば徒では済まない。怪しまれるといけないので帰りが遅くなるのもマズい。自然と二人の時間は学校から家に帰るまでの間に限られ、その僅かな時間だけがさやかの唯一の至福の時となった。そんな健全な交際が半年程続いたある日の学校帰り、彼が珍しくさやかを自宅に誘った。ちょうどその日はさやかの父親が近所の寄り合いに出席する日であったため、多少なら遅くなってもバレることは無い。さやかは始めての彼の部屋にワクワクしながら遊びに行き、そこで破瓜の痛みを知った。行為の最中も後も彼はとても優しく、さやかはこの時間が永遠に続けば良いとすら思った。しかし、幸せな時間というのは驚くべき早さで過ぎる。あっという間に外は暗くなり、さやかは名残惜しみつつも帰り支度を始めた。家までの帰り道、隣を歩く彼と幾度と無く視線を交わし、どちらとも無く微笑み合った。特に何を話すわけでもなかったが、二人の距離は以前よりも確実に近くなっており、互いにその幸せを噛み締めていた。しかし……。幸せの終局はあまりにも突然訪れた。さやかの家の目前の曲がり角を曲がった時、さやかの全身は一瞬で硬直し、顔からは血の気が引き、代わりにもの凄い勢いで脂汗が噴き出してくるのを彼女は感じた。まだ帰っていないはずの彼女の父親が、それまで見たことの無い鬼の形相で玄関の前に仁王の如く立っていたのである。父親はゆっくりと二人に近づいてきたかと思うと、いきなり彼の顔を思い切り殴った。「二度と娘に近づくな……」低く、威圧感のある声で彼にそう言い放つと、父親はさやかの腕を掴み、彼女を引きずるようにして家の中へと入っていった。それからの数時間、父親に怒鳴られ罵倒され続ける間、さやかはずっと彼の優しい笑顔を思い浮かべていた。しかし、翌日教室で彼の痛々しく腫れた頬を見ると、彼女は彼に声を掛けることができなかった。そして彼も又、彼女に声を掛けてくることは無く、二人が仲睦まじく一緒に帰ることは二度と無かった。